
自営業者が住宅ローンに通らないといわれる理由には、会社員に比べて収入が不安定な点や所得証明の難しさなどが挙げられます。本記事では、ローンを通過させるコツや申込時の必要書類など、自営業者に向けて住宅ローン審査のノウハウを解説します。
自営業者が住宅を購入する際「住宅ローンの審査に通るか不安…」と感じるのは自然なことです。会社員に比べると審査のハードルは高めですが、適切な準備をすればクリアできる可能性は十分にあります。
本記事では、自営業者が住宅ローンに通らないといわれる理由や通過させるコツ、ローン申込時の必要書類まで詳しく解説します。マイホームを検討している自営業の方は、ぜひ参考にしてください。
自営業は住宅ローンが通らないといわれる理由
自営業者が住宅ローンに通らないといわれる理由には、収入面が大きく影響します。
金融機関は、申込者が将来にわたって安定して返済できるかどうかを「年収」「職業」「勤務年数」などの項目で評価します。たとえば、大企業に10年勤めている社員が急に収入を大幅に減らす可能性は低いと考えられるのが一般的です。
しかし、自営業の場合、会社員のように毎月一定額の給与が保証されているわけではなく、月・年ごとに収入が変動します。また、現時点では安定収入がある場合でも、主要取引先との関係悪化や経営者の健康状態の悪化、自然災害や感染症の流行といった予期せぬ出来事などの理由で、突然事業が傾くリスクも考えられるでしょう。
また、自営業者は事業運営のために借り入れをしていることが多く、それが審査のマイナス要因となる場合があります。金融機関は、年収に対する返済額の割合である「返済負担率」も重視するため、事業のために負債があるとその分も加味されて、返済負担率が高くなり、審査に通りにくくなります。
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住宅ローンの審査で見られるポイント

自営業者が住宅ローンの審査に通りやすくするためには、審査で重視されるポイントを理解し、事前に対策を講じることが重要です。以下では、各ポイントについて詳しく解説するため、申し込み前に対策を練っておきましょう。
3期連続で黒字を出しているか
住宅ローンの審査基準において「収入の安定性」は重要な項目のひとつです。自営業者が安定した収入を得られているかどうかの基準は、一般的に3期の平均所得が対象となります。平均所得が3期連続黒字であると、継続した安定収入があると認められるでしょう。
しかし、継続した安定収入には明確な基準がないため、金融機関によって基準は異なります。たとえば、3期のなかで最も低い年度の所得を基準とするところもあれば、赤字決算がある年度でも理由や解決策を説明できれば、審査に通るところもあります。
準備できる自己資金はどのくらいか
自営業者は、継続した安定収入があると認めてもらうことが難しい傾向にあるため、マイホームを購入する際には、頭金(自己資金)をできるだけ多く準備しておくことが望ましいです。
頭金が多いほど、借入額が減り返済負担率が軽減されるため、審査で有利に働きます。また、頭金が多いということは、計画的に資金を準備できる能力があることを証明できます。
住宅ローンにおける返済負担率は「年間返済額÷年収×100」で求められます。返済負担率は20〜25%以下が望ましいとされており、数値が低いほど余裕を持った無理ない返済が可能です。
たとえば、頭金ゼロで年間返済額を120万円とした場合の返済負担率は、年収500万円で24%、年収400万円で30%です。この場合、年収400万円では理想的な返済負担率より割合が高くなり、審査が不利になってしまうことがあります。
しかし、頭金を出して年間返済額を96万円まで下げられれば、年収400万円の場合でも、返済負担率は24%となります。
年齢や健康状態に問題がないか
住宅ローンの審査では、収入だけでなく年齢や健康状態も重要な判断基準となります。これらの要素は、返済能力や将来のリスクを評価する材料としてチェックされるため、事前に理解しておくことが大切です。
多くの金融機関では、完済時の年齢を80歳未満に設定しているため、申込時の年齢が高いほど審査が厳しくなります。また、借入時の年齢が高いと借入期間が短くなるため、毎月の返済額が増え、結果として返済負担率が高くなります。
また、住宅ローンを組む際には、ほとんどが「団体信用生命保険(団信)」への加入を条件としています。団信は、契約者が返済期間中に死亡または高度障害状態になったときに、住宅ローンの残債が保険金で支払われる仕組みです。契約者に万が一のことがあっても、残された家族が経済的に困窮することなく、住み続けられます。
団体信用生命保険という名のとおり、生命保険であるため、加入時には健康状態について告知しなければなりません。持病や既往歴があると加入できないこともあるため、ご注意ください。
未納の税金や保険料がないか
会社員であれば、所得税や住民税などの各種税金、厚生年金保険料や健康保険料などの各種保険料は給与から天引きされ、自動的に支払われます。一方、自営業者は自分で税金や保険料を納める必要があるため、なかにはうっかり支払い忘れていたという方もいるでしょう。
住宅ローンの審査では、税金や保険料に未納がないかも重要なチェック項目です。金融機関は申込者の返済能力だけでなく、信用力も重視します。税金や保険料の未納があると「支払いを怠る可能性がある」と判断され、審査に不利になることがあるため、注意が必要です。
もし未納分がある場合は、必ず完納してから住宅ローンを申し込むようにしましょう。
個人信用情報に問題がないか
住宅ローン審査では、その他融資やクレジットカード、キャッシングなどの利用履歴や支払い状況、借入残高といった個人信用情報もチェックされます。個人信用情報は、個人信用情報機関の情報をもとにチェックされます。
個人信用情報機関とは、クレジットカード会社などから提供される、個人の取引に関する情報を管理する機関です。この機関は、加盟している会社からの照会に応じて、必要な情報を提供します。
住宅ローンを申し込む際、金融機関はこの個人信用情報を参照して審査を行います。そのため、問題がある情報が記録されていると審査が厳しくなることがあります。具体的には、以下のような問題がある場合、審査に影響を与えることがあります。
・クレジットカードや融資などの支払い遅延
・自己破産や任意整理などの債務整理経験
・クレジットカードや融資の強制解約
・短期間での複数融資の申し込み
これらのケースはあくまでも一例で、明確な基準はないため、問題がある情報が記録されている場合でも審査が通ることもあります。しかし、問題ある情報は審査に悪影響を及ぼす可能性が高いため、マイホームの購入を検討し始めたら、借り入れの有無や支払い状況などをきちんと確認しておきましょう。
住宅ローンの審査を通過させるコツ

自営業者が審査に通るためには、いくつかのコツがあります。以下では、住宅ローンの審査を通過させるコツについて詳しく解説します。
ほかのローンを完済しておく
住宅ローンの審査では、既存の借り入れやローンについて申告しなければなりません。マイカーローンやクレジットカードのリボ払いなどのほか、事業資金を調達するための事業融資なども該当します。
なお、借入金額だけでなく、借入件数も重要な審査基準となります。借入金額が高いほど、また借入件数が多いほど、審査に不利になる可能性があります。審査に通る可能性を高めるためには、申し込み前に完済しておきましょう。
もし完済が難しい場合は、借入件数や借入金額を減らすように努めましょう。
税金対策のしすぎに気をつける
自営業者は、税金を抑えるために経費を多く計上し、所得を少なくすることがあります。これにより、手元に残るお金を増やせますが、住宅ローンの審査では注意が必要です。
もし経費を多く計上しすぎて所得が低く見えると、返済能力がないと見なされてしまうことがあります。税金対策は大切ですが、住宅ローンを申請する際には所得をあまり減らしすぎないようにしましょう。
住宅ローンが通りやすい金融機関を選ぶ
自営業者に限らず、住宅ローン審査に通るためには「金融機関選び」がとても重要です。金融機関には、都市銀行や地方銀行のほか、信用金庫や信用組合など、さまざまな種類があります。
自営業者が住宅ローンを申し込む場合、大手の金融機関では審査に通るのが難しいこともあります。融資の審査には明確な基準がなく、金融機関によって重視する項目が異なるため、自分に合ったところを選ぶことで通る可能性を高められます。
なかには、自営業者向けの住宅ローンを提供している金融機関もあるため、一度調べてみましょう。
また、普段から取引しているメインバンクに相談することや、不動産会社に相談してみるのも有効な手段です。
フラット35を利用する
もし一般的な金融機関での住宅ローン審査が難しい場合は、フラット35を検討しましょう。
フラット35は、勤務形態や職業、勤続年数などの制限が少ないため、幅広い人が利用できる全期間固定金利型の住宅ローンです。全期間固定金利型とは、ローンの借入時から完済まで金利が一定の住宅ローンのことです。
また、住宅金融支援機構と民間の金融機関が提携して融資を行うため、安心して利用できます。
フラット35は、一般的な金融機関の住宅ローンと比べて審査基準が柔軟で、自営業者や転職直後の人など、収入の安定性を証明しにくい方も多く利用しています。
また、団体信用生命保険(団信)は任意加入である点も大きな特徴です。そのため、健康状態に不安がある方でも住宅ローンが受けられます。ほかにも保証人・繰り上げ返済手数料が不要といったメリットがあります。
出典:フラット35(https://www.flat35.com/)
自営業で住宅ローンを申し込む際の必要書類
自営業者が住宅ローンを申し込む際に必要な書類は、主に以下の5点です。
・本人確認書類
・確定申告書の控え
・所得税の納税証明書
・団体信用生命保険の申込書・告知書
・物件や頭金に関する書類
各書類について詳しく解説します。
本人確認書類
本人確認書類には、運転免許証・マイナンバーカード・パスポート・健康保険証・住民票などが挙げられます。
なお、顔写真付きの本人確認書類を提出する場合は1点で済みますが、健康保険証や住民票など顔写真がない書類のみの場合、1点だけでは本人確認として認められないことがあります。健康保険証以外に上記のいずれかによって本人確認を補完する必要があります。
また、住民票は3か月以内のものを提出するなど、期限が設けられていることもあるため、あらかじめ確認しておきましょう。
確定申告書の控え
自営業者の場合、確定申告書の控えの提出が必要です。確定申告書の控えは会社員でいう源泉徴収票にあたるもので、収入を証明するものです。金融機関によって異なりますが、直近2〜3年分の提出が一般的です。
税務署の受付印があるもの、e-Taxで申請した場合は申告データのほか受領メールなど、受理されたことが証明できる書類もあわせて提出します。
所得税の納税証明書
所得税の納税証明書は、納付した税額および未納税額、所得金額、滞納処分を受けていないことなどを証明するものです。住宅ローン審査では、収入面と信用力があることが確認できる重要な書類です。こちらも直近2〜3年分を提出します。
所得税の納税証明書は、オンラインまたは書面で交付請求が可能です。
オンラインの場合は、スマートフォンやPCからe-Taxにアクセスし交付請求します。オンラインで交付請求し税務署の窓口で証明書を受け取る、オンラインで交付請求し郵送で証明書を受け取る、電子納税証明書(PDF・XMLファイル)で受け取るの3つの受け取り方法があります。
書面で交付請求する場合は、郵送で交付請求書を送付する方法と窓口に交付請求書を提出して交付請求する方法があります。請求時には本人確認書類や本人確認書類の写しなどの送付・持参が必要です。
また、いずれの受け取り方法も手数料がかかるため、ご注意ください。請求時に必要な書類および手数料の詳細は、国税庁ウェブサイト「納税証明書の交付請求手続」をご確認ください。
出典:国税庁「納税証明書の交付請求手続」(https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nozei-shomei/01.htm#a04)
団体信用生命保険の申込書・告知書
ほとんどの金融機関では団体信用生命保険の加入が必須条件となっているため、申込書と告知書の提出が必要です。
持病や既往歴など、健康上の理由で団信に加入できない場合は、加入が任意のフラット35を選択するのもひとつの手です。
物件や頭金に関する書類
住宅ローンの審査では、物件や頭金に関する書類も重要な資料です。物件に関する書類には、売買契約書・重要事項説明書・請負契約書・設計図面・見積書などが挙げられます。頭金に関する書類は、預金通帳のコピーや資金計画書などです。
物件に関する書類は、住宅を購入する不動産会社が準備してくれますが、頭金に関する書類は自身での準備が必要です。また、金融機関により必要な書類が異なるうえに、書類の発行には時間がかかるものもあります。事前に確認し、早めに準備を進めておきましょう。
まとめ
自営業者は住宅ローンが通らないといわれる理由には、収入が不安定になりがちであることや、会社員に比べ所得の証明が複雑であることが挙げられます。しかし、適切な対策を行えば、自営業者でも審査に通る可能性は十分にあります。
自営業者が住宅ローン審査に通過するためには、過去3期の所得が黒字であることが重要です。また、自己資金を多く準備することで返済負担率を軽減し、審査を有利に進められます。
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